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ポリーニ。

先日、約20年ぶりぐらいでポリーニの生演奏を聴いてきました。Pollini Perspectives 2012と題して4夜に渡ってベートーヴェンの後期ピアノソナタを弾き尽くしたうちの初日とラストの2度、サントリーホールへ出向いてきました。

初日はピアノソナタ第21、22、23番。正直、ガッカリでした。20年前と言ったら全盛期だった頃の演奏と、若い頃の録音でしか耳にしていなかったので期待値がすごい事になっていたせいもあるかもしれません。バリバリ弾いて、マシンだと言われてしまうような人に、円熟と枯れが加わったらどんな素敵なことになるんだろうとワクワクして行ったのです。が、最初のワルトシュタインからもう・・・なんだコレ、舐めてんのか?と思ってしまったほど。なんかね、たとえばソナタを弾きこなす程度の技術を持った人が、小さい頃に習ったブルグミュラーやトンプソンをさらりと弾いて見せた感じと言ったら伝わるかな。ちゃんとピアノと向かい合って弾いているんじゃなくてこの曲知ってる?アナタも習った?と弾いてみせる感じ。鍵盤の下まで弾き切らずに力を入れずにさらりと。ピアノが弾けると周りに知られて、あの曲弾いてみせてよと誰でも知っている曲をリクエストされ、でもそんな曲は敢えて習ってないから弾いたこともないけど、まぁチョロチョロっと弾いてみせるだけなら出来るかなと思って弾き始めたら意外と手こずった・・・みたいな。最後まで聞いてみれば、あぁ、きっと熱情まで弾き切るためには体力温存するしかなかったのかなと好意的に解釈できなくもなかったけど、それにしたって・・・。むしろ、あーもう最後の来日になるのかもしれないなぁ・・・と淋しくなってしまい。きっとそう思った人たちが多かったのでしょう。まさかのスタンディングオベーションが。

そんな初日だったので、まったく期待もせず、正直、友人を誘ったことを申し訳なく思いながら再び最終日のサントリーホールへ。この日はピアノソナタ第30、31、32番。最後の3つのソナタ。第30番は自分的にも思い入れのある曲なのですが、一瞬でひき込まれました。いや、実際にはちょっと無神経な観客がいたので若干・・・かなりイライラしてましたが。でも、いろいろなことを思い出しながら、やっぱりさすがだなぁと思わされた演奏でした。第31番は、ソナタ全曲の中で一番のお気に入りです。隣席でのまさかのクレームに一人ウケしつつも、静かになったので集中して聞けることに感謝(笑。第30番の終盤でも思ったけど、今回のポリーニは高音の煌めきが際立っていたように感じました。そして第31番、32番ともに・・・神様が降りてきたような、そんな至高の瞬間が何度もありました。いやいや、ポリーニさすがだわ。

初日と最終日と聞き比べて、もちろん本人の調子もあったにせよ、やっぱり超一流と言われているピアニストにも時代(年齢)によって相性のいい曲というか弾き時というのがあるんだなぁ、とつくづく感じました。ワルトシュタインにしても熱情にしても、弾き手にもそれだけの、ほとばしるぐらいの「熱さ」が必要で、“内に秘めた”熱さではダメなんだろうな。あの年齢のポリーニにはもう手に余るならぬ心に余る曲だったのかもしれない。逆に第30、31、32番あたりの曲はポリーニの枯れ具合とも心のありようともぴったりマッチしたものだったように思えました。

ということをずっと書こうと思いながら先延ばしにしていたのだけれど、今、紅白で美輪明宏の「ヨイトマケの唄」を聞いて心が震えたので勢いで書き上げました。

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帰りに友人と寄ったワインバーで、また幸せな時間を過ごした記念写真。

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大好きなChateauneuf-du-Pape。

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お店のマスターにお裾分けしていただいたポートワイン。

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